論文要旨(Abstract)一覧

ソフトウェアエンジニアリングによるプロジェクト品質と生産性の向上

青柳 亨


アプリケーションサービスを提供する端末はPCから個人が持ち歩けるタブレットやスマートフォンの活用が進んでおり、レスポンシブデザインやUX(ユーザエクスペリエンス)を重視した開発が必要となっている。これらのプロジェクトでは従来と同様の開発手法では製造者やユーザーに仕様を伝えきることはできず、テスト工程で仕様齟齬といった品質問題を起こすことが少なからず発生する。本稿では、ソフトウェアエンジニアリングを活用し上流工程での仕様の完全見える化による品質と生産性の向上と、アジャイル開発とウォータフォール開発を組み合わせたハイブリット式の開発プロセスについて紹介する。


実プロジェクトの問題分析を通じたCCPMの適用方法に関する考察

朝稲 啓太、 大場輝幸、 大田黒俊一


近年のプロジェクト開発は多様化,複雑化,短期開発化,技術の急速な進展により,問題化するプロジェクトが多く発生している.我々は実プロジェクトの問題分析を通じて,どのように改善したら良いかを整理した.実プロジェクトは企画型のプロジェクトであり,リーダークラスである主要員のマルチタスキングがプロジェクト遅延の大きな要因であることをつきとめた.そこでプロジェクトを効率的に進めるためマルチタスキングを少なくするCCPM(Critical Chain Project Management)の具体的な適用方法を検討する.


保守開発プロセスにおける影響調査作業の標準化に関する一考察

足立 幸子、 森田孝哉


影響調査作業は保守開発にて実施する作業であり,システムの変更要求に伴う影響範囲を特定することを目的としている.影響調査作業を行うにはソースコードや設計書を元に現行システムの仕様を理解することが重要である.しかし,長期にわたり保守開発が行われてきたシステムでは度重なる追加開発により,ソフトウェアの複雑化や肥大化によるソースコードの難読化,また,設計書の更新漏れによる設計書の陳腐化が発生する場合がある.ソースコードの難読化や設計書の陳腐化は現行システムの仕様理解を妨げ,影響調査作業の属人化を引き起こす.属人化した影響調査作業は,作業者の力量や経験則に依存することとなり作業効率や作業品質のバラつきを発生させる.本論文では,属人化した影響調査作業に依存している保守開発プロジェクトに対して実施した影響調査作業の標準化に対する取り組みについて紹介する.


プロジェクトメンバに向けた道徳教育支援システムのための試行実験ー大学生をターゲットにしたモラルのジレンマの実施ー

阿部 敬一郎、 中谷 多哉子


本論文は情報システム開発プロジェクトに関係するすべての人達の道徳性を発達させ,そのプロジェクトにおいて高次な道徳的行為を発現させる教育支援システムを目指している.成人向けの道徳教育の試行実験として,情報システム開発の職を将来目指さない大学生もターゲットにしている.道徳性を効果的にかつ目に見える形で発達させる教育方法を作るために,L.コールバーグの「モラルのジレンマ」授業を2年に渡り実施した.教材を作成する際のルール,教材の良し悪しを判定する基準,学生の道徳性の高まりを確認する方法,高い道徳性を実践することの評価まで,一連の試行を通じて結果を考察する.


PBLにおける性格検査を加えたチーム編成法に関する一考察

荒井 武尊、 下村 道夫


与えられた課題に基づき能動的学習を行うPBLでは,少人数のチームに分ける学習形態が一般的である.成果物を評価対象として競い合うケースなど,高いパフォーマンスを追求すべき場合には,適切なチーム分けを行うことが重要な課題となり得る.チーム分けにおいて考慮すべき事項としては,各学習者のもつスキルレベルに加えて,人間関係の問題を回避するための性格的側面の配慮も必要となる.従来より,性格を把握する方法として性格検査が用いられており,質問紙法,投影法,作業検査法に大別される.本稿では,PBLの各種条件(目的,期間,人数等)に応じてどのような性格検査手法を用いるべきなのかについて考察する.


ドキュメンテーション業務の切り出しによる開発負荷軽減の取り組み事例

荒木 辰也、 石田 兼司、 今井 達朗、 松山 新


昨今、システム設計の高度化・複雑化に伴い、プロジェクトマネージャーや開発者の負担は一層増加する傾向にある。当社では、開発現場が設計付加価値業務に専念できる環境を整えるべく、主に開発ドキュメント類の制作に着目し、役割分担の明確化と開発ノンコア業務の分業化を推進している。特にプロジェクトマネージャーは、本来のマネジメント業務に専念することにより、早期にプロジェクト進行上の問題・課題を把握し、最適な施策を打っていくことができる。プロジェクトの遅延予防とマネジメント品質向上を目指す当社の取り組みを紹介する。


プロジェクトマネージャーのセルフマネジメントに関する一考察
― プロジェクトマネージャーのタスク管理を事例に ―

池島 雅彦


プロジェクトを遂行する上でプロジェクトマネージャーは時間的な余裕を持って行動しなければならない.これはプロジェクトが終結するまでの間に発生するであろう様々な課題に対し迅速に対応するために不可欠である.しなしながら,プロジェクトマネージャーは多忙であり,多くのタスクを抱えている.本稿ではいくつかのプロジェクトで経験した実例を元にプロジェクトマネージャーのセルフマネジメントと称しプロジェクトマネージャー自身のタスク管理について考察している.大規模プロジェクトにおけるタスク管理の失敗事例,実践したタスク管理の事例を挙げ,今後のプロジェクトマネジメントの一助としてまとめている.


ハイブリッド型システム構築プロジェクトにおける仕様調整の取り組み事例

池田 一幸、 黒田 祐登


今後,多数のクラウドサービスを組み合わせて活用することにより,スピーディーにビジネス環境を構築する流れが加速していく中で,各所に点在するパブリッククラウドや顧客専用のプライベートクラウド,社内の基幹システム間を連携したハイブリッド型システムが増加する. ハイブリッド型システム実現のためには,プライベートクラウドに関する顧客からの要求仕様を実現することに加えて,プライベートクラウドとパブリッククラウドと基幹システムとの整合性を維持するための連携機能が必要となる.今回は,調達系のハイブリッド型システムを構築したプロジェクトにおける,顧客との仕様調整の取り組みを紹介する.


チームのマネジメントと開発メンバのパフォーマンスの関係性に関する一考察

池田 倫久、 平地真也、 清水理恵子


開発メンバのパフォーマンスを引き出すためには,メンバを直接マネジメントする役割を持つプロジェクトリーダのマネジメントが大きく影響すると考えられる.プロジェクトリーダのマネジメントスキルを向上させるため,我々は,OJT(On the Job Training)を通じて育成する取り組みをしている.今回,システム開発のソフトウェア結合プロセスにおいて,プロジェクトリーダのOJTを行った.このOJTでは,同じ題材のソフトウェア結合プロセスを行う複数のチームを開発メンバのスキルが均一になるように考慮して編成した.各チームリーダは,それぞれが進捗管理や品質管理に関するマネジメント方法を工夫してソフトウェア結合プロセスを実施した.本論文では,チーム間のパフォーマンスの差異について,チームリーダのマネジメントに関する工数と開発メンバの開発工数の関係に着目して分析評価した.


共分散構造分析を用いたプロジェクト型組織における運営法の提案

石井 葉月、 武田善行


組織風土に関する研究は歴史が古く,職務満足やモチベーション,リーダシップ,業績,成果等との関係について盛んに研究されてきた.他方でプロジェクトチームのようにメンバの流動性が高く,目標が限定的な集団の風土の研究はそれほどされていない.本研究では,大学の研究室や習い事を行うための集団など,個々の目的達成を主眼としたメンバが比較的短期間に構成する集団において,集団の運営上重要な要因を明らかにすることを目的とする.既存の組織風土研究において重要視される指標を手掛かりに分析を行い,各指標間の関係に基づきより良い運営方法について検討する.大学の各研究室において聞き取り調査を行い,結果について検討及び考察する.


PBLにおける対人トラブルに対するPMの対応方法に関する一提案

石貝 優奈、 下村道夫


近年,能動的な学習に基づくPBLは高い教育効果が得られるものとして注目度が高まっているが,PBL実施中においては多種多様なトラブルが存在する。作業スキルに起因するトラブルに対しては、仕事量の削減、役割りの変更など直接的なアプローチを取れる場合が多い。一方,人に起因するトラブルにおいては,役割,人間関係,環境要因など様々な要素が組み合わさっているため,どのようなアプローチをとるべきかがわかりづらいケースがあると考えられる.本稿では,PBLにおける対人トラブルを類型化した上で,それぞれのPBLに関連する各種条件を考慮し,取るべき適切なアプローチ方法について整理したデシジョンテーブルを提案する.


CCPM 簡易型シミュレーションゲームと検証

怡土 祐樹、 井本 祐二、 朝稲 啓太、 峯 肇史、 古賀 陽介、 太田黒 俊一


PM学会・九州支部では,TOC(Theory of Constraints:制約条件の理論)-WGの活動を通し,CCPM(Critical Chain Project Management)のエッセンスをより良く現場メンバーに伝達するためのシミュレーションゲームの開発を目的として,卓上で行える簡易型のシミュレーションゲームを考案した.CCPM を導入するにあたり,CCPM の理論を理解しても得られる効果までは分からず,導入を決定する障壁となっている.簡易型シミュレーションゲームは,業務を単純なモデルで表現したものに,CCPMの3つのルール(パイプライニング,フルキット,バッファマネジメント)の内、パイプライニングにフォーカスを当てたシミュレーションゲームである. 簡易型シミュレーションゲームにより,CCPM のエッセンスを体験的に理解し,CCPM 導入を検討する際の一考に値するものになることを期待したい.


プロジェクト・マネジメント未経験組織に対する効果的PM導入アプローチの一例

井之川 幸彦、 井之川幸彦


プロジェクト・マネジメントを未経験の組織に、プロジェクト・マネジメント技法をレクチャーしていくと、理解に時間がかかる知識エリアがある一方で、短時間で正しく理解され実際に活用される知識エリアもある。これは、普遍的なプロジェクト・マネジメントの中に、一般常識で理解しやすいものと、それなりの経験・知識といったバックグラウンドを必要とする領域が存在することを示していると考えられる。 この知見を整理し、プロジェクト・マネジメント未経験あるいは経験の少ない組織に対する、プロジェクト・マネジメント技法の導入に活用し、得られた効果について報告する。 またこの視点は、これからプロジェクト・マネージャーを目指そうとする人材に対する育成にも活用できると考えられ、その可能性と効用について考察する。


九州支部における超アナリスト育成の取り組み

岩崎 孝司、 中西 恒夫


プロジェクトマネジメント学会九州支部では,ソフトウェアプロセスの改善に関する知識やスキルの共有と発展,普及を目的として,ソフトウェアプロセス改善に関するワーキンググループを行っている.同ワーキンググループは,1つに「超アナリスト育成」のタスクフォースがある。本論文では,同タスクフォースの目的,これまでの活動概要,今後の活動方針等について報告する


OSS利用におけるリスク管理とOSSフィージビリティスタディの一考察

岩崎 孝司、 高山修一、 岩永裕司 、 鵜林尚靖、 亀井靖高


昨今のソフトウェア開発において、OSSを利用した開発が徐々に増えてきている。また、利用したOSSに起因する問題が開発後半で発生し、開発コスト増や納期遅延といった問題が発生することも珍しくない。富士通QNETでは、OSSを利用する前に利用時のリスクを特定するOSS事前評価手法を独自に開発して、トライアルにおいてリスクを正しく抽出できる事を確認した。本研究では事前評価により抽出したリスクをOSS事前調査、事前評価であるフィージビリティスタディの確認方法に反映させる方法について考察した。考察結果を当社で発生したOSS関連問題の事例を元に確認し、リスク評価の観点とリスク予測結果がフィージビティスタディに有効に活用できる事が確認できた。


歴史上のサブリーダーから学ぶプロジェクトマネジメントの教訓に関する一考察

上野 奈々、 玉田亮、 下村道夫


プロジェクトの現場では理論やツールも重要であるが,個人の経験と勘がより重要とされることも多い.それらを探る一手法としては,歴史上のプロジェクトや個人を分析・考察することが考えられ,例えば豊臣秀吉などのリーダー的人物を分析した研究成果が報告されている.一方,プロジェクトや組織の運営においては,リーダーの支援や代行,メンバーとリーダーとの橋渡し役などを担うサブリーダーの重要性が高く,その補佐行動がプロジェクトの命運を左右することがあると言われている.本稿では,歴史上の様々な時代のサブリーダーの補佐行動をプロジェクトマネジメントの観点から分析することで,時代に依存しないサブリーダーとしての教訓について考察する.


プロジェクト失敗構造モデルを用いたプレフェーズにおけるリスクマネジメント手法の提案

内田 吉宣、 海老澤竜、 山岡彰、 初田賢司


本来発生すべきではない費用やムダな費用であるロスコストは企業の利益率に直結するため,ロスコストの削減は経営課題の一つである.我々は,ロスコストを削減するための活動(ロスコスト・マネジメント)に取り組んでいる.ロスコストを削減するには,受注後の実行管理も重要であるが,受注までのプレフェーズにおいてリスクの早期把握と対策を実施することも重要である.本稿では,受注までのプレフェーズにおける意思決定支援を目的としたプロジェクトの失敗構造モデルの活用方法を提案する.具体的には,先行研究のリスク伝播モデルをプレフェーズでの利用にカスタマイズした様式(損益悪化パターン)を用いたアセスメントプロセスを提案する.


パーソナルソフトウェアプロセスに基づく自己改善におけるインストラクタの役割に関する一考察

梅田 政信、 梅田政信、 片峯恵一、 荒木俊輔、 橋本正明


パーソナルソフトウェアプロセス(PSP)は、SEIのWatts S. Humphrey により開発されたソフトウェア技術者のための自己改善のプロセスである。PSP for Engineersは、SEI認定のPSPトレーニングコースの一つであり、講義とプログラム開発演習、および自己分析レポートを通じて、改善提案とその実施結果の評価とを繰返すことにより、高品質ソフトウェア開発に必要なスキル習得を図る。PSPを学ぶための書籍や講義資料等は、市場やWebサイトより入手可能であるため、自学自習も可能であるが、改善提案の根拠となるプロセスデータの妥当性等を自身で判断することは必ずしも容易ではない。本稿では、九州工業大学の大学院生を対象としたPSP for Engineersの実施結果に基づいて、インストラクタが果たしている役割を定量的に評価し、自学自習による自己改善の課題について考察する。


社会課題とプロジェクトマネジメント

大津 真一


NPO団体等は、社会課題の解決に向けたプロジェクトに取り組んでいる。それらは、ビジネスプロジェクトとは違う、社会課題解決に取り組むプロジェクトの特有の特徴を持っている。本論では、社会課題に取り組むプロジェクトの特徴を整理し、プロジェクトマネジメントの適用可能性・有効性について考察する。このことはプロジェクトマネジメントの社会へのより一層の普及に貢献することができる。


プロジェクト内教育の改善によるIT人材育成と開発効率の向上

大西 準一、 橋爪正和、 清水理恵子


IT人材を育成するために,実践的なスキル向上の場としてOJT(On the Job Training)を利用するケースが多い.弊社の人材育成では,高度IT人材を育成するために,入社1年目にソフトウェア構築プロセスのスキルを身に着けることを重視している.弊社のOJTでは,新入社員がシステム開発プロジェクトに参画し,ソフトウェア構築プロセスからソフトウェア結合プロセスを経験する.システム開発プロジェクトでは計画された納期と品質を確保する必要があるため,ITスキルが不足している新入社員でも,納期を遵守して品質を確保できるように施策を考える必要がある.本論文では,OJT中の教育内容の改善により,新入社員の開発効率を向上させた事例を紹介する.


CCPMの考え方を流用した試験工程における生産性の向上
- 進行中タスクの制限により納期遵守と生産性向上を実現した事例 -

大場 輝幸、 大田黒 俊一、 朝稲 啓太


PM学会・九州支部では,TOC(Theory of Constraints:制約条件の理論)-WGの活動を通し,CCPM(Critical Chain Project Management)を実プロジェクトで検証することとした.一般的にCCPMはバッファ管理を実施することで効果を得ようとするが,我々の活動では「進行中タスクを制限する」ことが肝要であるという結果を導いた.今回,「進行中タスクを制限する」ことにより生産性が向上することを,実際のシステム開発プロジェクトへ適用し成果を得た事例として発表する.ここでは,タスクを制限する方法/実際の効果/今後の課題について述べる. また,本事例はシステム開発の試験工程にCCPMを部分的に適用した.これによりスケジュール短縮(納期遵守)や生産性向上の効果が検証できた.この事例を参考にしていただき,多くのプロジェクトに展開される事を期待したい.


PM標準カリキュラムにおける共通部分の科目概要案について

大村 保之、 橋爪 宗信、 村上 哲也、 中尾 太郎


PM学会教育出版委員会(委員長:橋爪宗信)では, 広く大学等の教育現場で活用できるプロジェクトマネジメントの標準カリキュラムの策定を目指し, PM学会として検討を進めている. これまでに,PM標準カリキュラムとして, プロジェクトマネジメントの標準知識で学部学科等の区分によらない共通部分と, 各専門分野に特化したプロジェクトマネジメント領域にフォーカスした個別部分という体系を整備してきた. 本報告では, 教育出版委員会がとりまとめたPM標準カリキュラム共通部分の科目概要案を説明する.


プロジェクトマネジメント研究プラットフォームとしてのプロジェクト挙動シミュレーションシステムの活用可能性に関する検討

岡田 公治


プロジェクトマネジメントに関する研究は,研究対象であるプロジェクトの独自性,長期性 (開始から結果が評価されるまでの期間が長い),少数性 (同一母集団に属するサンプル数が少ない),試行困難性 (失敗が許されず極端な条件での試行ができない) 等の性質により,生産管理等の定常業務に関する研究に比べ困難を伴う.そのような問題意識から,プロジェクトマネジメント研究プラットフォームとしてプロジェクト挙動シミュレーションシステムが試作されている.本稿では,プロジェクト挙動シミュレーションシステムの活用可能性について検討した結果を述べる.プロジェクト挙動シミュレーションシステムは,大きく,(1) 影響推定システムとしての活用,(2) 実績データ生成システムとしての活用,(3) 制御対象システムとしての活用,の3つの活用可能性が考えられる.


プロジェクト挙動シミュレーションと強化学習に基づくプロジェクトマネジメント行動に関する基礎検討

岡田 公治


プロジェクトを制御対象として捉えれば「観測されたプロジェクト状態に基づき,制御操作としてプロジェクトマネジメント行動を意思決定し実行することで,目標状態に近づけていく一連の活動」としてプロジェクトマネジメントをモデル化することができる.本稿では,簡易プロジェクト挙動シミュレータを制御対象とし,プロジェクトマネジメント行動の意思決定ルールを自律的に機械学習するエージェントを,強化学習の一つであるQ学習により実装した.その結果,目標とその達成評価方法に応じて準最適なプロジェクトマネジメント行動決定ルールを学習エージェントが学習可能であることを確認できた.また,実装を通じて,(1) 効果的なプロジェクトマネジメント行動決定ルールを習得するためには,観測されるプロジェクト状態量に加え,プロジェクト内部状態量の推定が重要であること,(2) プロジェクト内部状態量の推定には,プロジェクトマネジメント行動来歴が活用可能であることが明らかとなった.


プロジェクトリカバリ計画・モニタリングのポイント

岡田 亮


SI開発において,何らかの理由でプロジェクト期間中にトラブルが発生し大規模なリカバリが必要となるケースが一定の割合で存在する.リカバリ計画をたてるものの,計画通りのリカバリができずにお客様の業務に大きなインパクトを与えるケースも少なくない.本稿では,テストフェーズにおいて品質の問題により大規模なリカバリが必要となるケースを想定し,リカバリ計画策定時のポイントと,リカバリ開始後のモニタリングのポイントについて整理し,実プロジェクトでの例を踏まえて考察する.


ある組織におけるプロジェクトマネージャ育成施策の変遷

小川 純平、 初田 賢司


日立製作所のシステム・ソリューション部門は,PMOによる組織的なPM育成施策をはじめてから約15年が経過している. その間,IT 業界の動向や社内のPMの成熟状況などに応じて,育成施策は変わってきた.ハードスキルを中心とした育成からソフトスキルの追加.社内独自基準からグループ会社統一基準,さらには業界基準の適用.また,プロフェッショナル貢献・相互研鑽の注力化などがある. 本稿では,その変遷を事例として紹介する.


アイデアソン手法を用いたAI活用に関するアイデア創出の一事例

奥野 幸一、 林 路彦、 中島 雄作


 ここ数年,IoT,ビックデータ,人工知能(AI)などの技術は,かなりのスピードとインパクトで進化しており,新たな技術を活用した,ビジネス革新を生み出す情報システムの提供が求められている.  筆者らが所属する情報システム部門でも,社内情報システムへのAI活用を積極的に検討し進めてきた.  本稿では,ビジネス革新に繋がるAI活用のアイデア出しに際し,従来から利用されるブレーンストーミング手法に加えて,新たにアイデアソン手法を用いたアイデア創出の事例と,その有用性について述べる.


大規模基幹システムのプライベートクラウド化への挑戦

尾崎 俊文


筆者はこれまで14年間,大手自動車製造業A社様(売上10兆,従業員14万名)に携わってきたが,その中でA社様を取り巻くシステム環境も大きく変化してきている.現在は約5,300台あるサーバーの内,プライベートクラウド上でのシステム構築が90%以上を占めており,システム構築においてはプライベートクラウド化を前提に進められている.しかし,その中でも大規模システムにおいては,プライベートクラウド化が進んでいない現状であった.筆者がPMとして,大規模システムをプライベートクラウド化するために取り組んだ2つの手法について述べる.


レトロスペクティブ実践による課題と考察

落合 昌樹、 木島 教和、 木村 誠、 森 浩起、 中村 祐貴


近年のIT開発において,アジャイル型のソフトウェア開発プロセスであるScrumは,アジャイル開発の多くで導入されている.弊社のソリューションで利用するツール開発においても,2014年5月からScrumを導入している.特にScrumのプロセスの中でもアジャイルの成否を左右するレトロスペクティブ(ふりかえり)を試行錯誤しながら徐々に改善することで,一人の強いリーダーの力ではなく,チームメンバー間のコミュニケーション向上によるチーム力強化が重要であることがわかった. 本稿では,レトロスペクティブ(ふりかえり)の実践による課題と考察を説明する.


生産性向上に向けた動的リーダ配置手法とベーストレーニングの提案

片岡 優也、 田隈 広紀


我が国の労働生産性はOECD35カ国中22位と低水準に位置しており,一人当たりGDPが低いことを示している.また高度化・複雑化するICTシステム開発のリーダには,リーダシップスキルはもとより,開発課題に応じた高い技術力が求められている.本研究ではICTシステム開発の生産性向上を目的に,ITスキル標準(ITSS)を基に,開発工程毎に求められる技術力を持つ人材を動的にリーダとして配置する方法を提案する.併せて,リーダに共通して必要となる素養を効率的に身に付けるベーストレーニング及び,リーダ交代時の情報引き継ぎの項目を提案する.これらを疑似プロジェクトにて試行し,チームの生産性とメンバの作業満足度の両面が向上することを確認した.


PSP/TSPを基礎とした軽量なソフトウェア開発手法に関する取り組み

片峯 恵一、 片峯恵一、 梅田政信、 橋本正明


パーソナルソフトウェアプロセス(PSP)およびチームソフトウェアプロセス(TSP)は,高品質なソフトウェアを開発するための自己改善プロセス,およびチームの構築とマネジメントのための枠組みである.PSP/TSPは,中規模以上のソフトウェア開発において,優れた成果を示しているが,小規模なソフトウェア開発や要求が頻繁に変更されるプロジェクトにおいては,アジャイル手法が優れているという報告もある.そこで,PSP/TSPにアジャイル的な要素を取り込むことにより,軽量なソフトウェア開発手法を構築する活動を行っている.本論文では,これまでの活動概要と今後の活動方針等について報告する.


プレゼンテーション・スキルの評価・改善方式の提案

加藤 聖也、 加藤聖也、 堀内俊幸、 下田篤


プレゼンテーションでは,話し手によるわかりやすい情報発信だけでなく,聴き手の関心に則した情報伝達方法の工夫が求められる.従って,プレゼンテーション・スキルを向上させるためには,こうした望ましいプレゼンテーションの要件に照らした評価・改善が求められる.しかし,初学者同士では,要件に照らした指摘を行うことが困難である.そこで本研究では,初学者を対象としたプレゼンテーション・スキルの評価・改善方式を提案する.提案方式は,望ましい要件から構成したアンケート調査,わかりやすさに関する評価(重回帰分析),聴き手の関心に関する分析(因子分析),分析結果に基づく改善ガイドからなる.大学生38名を対象として提案方式を試行した結果を報告する.


大規模プロジェクトにおけるチーム視点での「見える化」による品質確保の取り組み

加藤 秀行


大規模プロジェクトにおいては,機能単位やシステム単位などで複数のサブプロジェクトに分割し開発することがある.しかし一方で,ITプロジェクトが混乱する要因として,設計漏れ・設計不十分等に起因し,テスト工程で問題が多発するものが多く,リスクが高いと言われている.これに対し,ITプロジェクトの成功要因の8割は人間に起因するものであり,チームやメンバ間の意志疎通を図るコミュニケーション能力,常識や文化の違いから生じる誤解の排除,メンバのモチベーション維持などが重要とされている. 本稿では,ITプロジェクトの混乱する事態を未然に防ぐために,ITプロジェクトの「見える化」としてチームやメンバ視点での取り組み結果について報告する


システム故障の早期復旧を目指した「ベーシックリカバリ」の検討
-NTTデータにおけるシステム故障長時間化防止への取り組み-

加藤 森悠、 廣瀬 純一郎、 木村 利幸、 坂本 大輔、 蟹谷 陽介、 鎌田 正彦


NTTデータは,日本電信電話公社を前身とするNTTから独立した経緯から,日本の社会基盤を支える事業継続性が極めて高い重要なシステムを多数運用している.これら重要なシステムのシステム故障による長時間の停止は,エンドユーザ並びに公共機関,企業など当社の直接のお客様へ多大な迷惑をお掛けするだけでなく,社会基盤の適切な運営に影響を及ぼす甚大な被害をもたらしかねない.当社のシステム故障は,問題判別が長時間化し暫定復旧オペレーションができない場合並びに不適切なオペレーションにより二次故障を誘発した場合に長時間化する傾向があった.これら長時間停止を防ぐために「ベーシックリカバリ」の方法論は策定された.「ベーシックリカバリ」は,問題部位を特定できていない状況下において,問題が存在する部位を包含する部位を包括的かつ確実に初期化することで,計画時間内に暫定復旧し長時間停止を防止する.本論文では,「ベーシックリカバリ」の考え方とその手法について紹介する.


プロジェクトの再炎上を防止する効果的な支援の考察

金子 英一


一度炎上したプロジェクトを立て直すためには,炎上の元となった問題を掘り下げ,真の原因への対策実施を含めてプロジェクトの再計画を行うことが必要である.しかしながら,主体となって再計画し管理と実行するチームや組織の能力に問題がある場合は,再計画から管理と実行において,再炎上を防ぐための監視や助言,更には直接的な人的支援等が効果的である. 当研究では,再炎上を防止するための具体的な支援内容とその効果について考察する.


AIによる不採算予兆検知を活用したプロジェクト管理プロセスの考察

鎌田 瞬、 後田 修治、 河野 綾子、 岡島 伸行、 大峡 光晴


社内の多数のプロジェクトに対し,PM支援を行っている全社的PMOでは,限られたリソースで不採算化するプロジェクトを早期に検知し,対策を講じることが重要である.当社PMOでは,AI技術であるDeep Learningを用いて不採算プロジェクトの予兆を検知する手法を開発し,対象プロジェクトの内,約65%の問題プロジェクトの自動検知を達成した.本手法を開発中のプロジェクトに適用する際に,更に高い精度で本手法を有効に活用することを目的として,AIによる予兆検知とPMOによるアセスメントを併用したプロジェクト管理プロセスの検証を推進中である.本論文では本プロジェクト管理プロセスの検証状況について報告する.


模擬プロジェクトを活用したPMコンピテンシー向上への取組み
― PBL(Project Based Learning)活動における模擬プロジェクトの効果―

上條 英樹、 吉川 泰広、 高澤 直樹、 榎本 貴文、 Dang Duc Chinh、 沙魚川 洋平


本稿は,産業技術大学院大学酒森研究室で実施しているPBL(ProjectBasedLearning)型教育で,模擬プロジェクトを活用したPMコンピテンシー向上への取組内容と効果を論ずるものである.PBL型教育とは,実社会で即戦力として活躍できる人材を育成するために有効な教育手法であり,数名の学生が明確な目標を掲げ,実際の業務の内容に近い1つのプロジェクトを完成させていくプロセスの中で,実社会で真に役立つスキルやノウハウを修得していくというものである.ユーザー企業とベンダー企業に所属するメンバーがそれぞれの企業の現状や経験をもとに,模擬プロジェクトを実施した具体的な効果について論ずる.


進捗状況を考慮したプロジェクトの成功確率の推定に関する研究

川名 青空、 横山 真一郎


プロジェクトの進捗が遅れる原因には様々な状況がある.プロジェクトの成否に関してはできるだけ早い段階で判断したい.そのためは進捗状況に応じてプロジェクトの成否をその都度判断してリスクを予見することが大切である.その際,リスクの特定や適切な対処方法を検討するために過去の経験データを活用することが有効である.筆者らはその進捗データを用いたプロジェクトの成功確率の推定に関する研究を行っている.これまでの研究では進捗遅れの原因を区別せずに予測モデルを検討してきた.今回は予測時点での遅れの原因がコストである状況に着目して,より精度の高いプロジェクトの成功失敗の予測モデルを構築した.


長期保守プロジェクトのリスクマネジメントに関する事例

北畑 紀和


ITのアウトソーシング事業として15年以上の長期に渡るプログラム開発・保守プロジェクトに参画している.およそ10年前から本プロジェクトではリスクマネジメントの一環として「アウトソーシング リスク評価」という名称の文書をまとめている.作成した文書については,プロジェクト内部はもとよりユーザー顧客とも情報として共有している.この文書は定期的に見直し作業を実施しているが,長期間に渡り見直しをしてきた結果,見直し作業での問題点も浮き彫りになった.本論文では,実施しているリスク評価の内容を紹介するとともに,問題点をあきらかにしている,


発展途上国でのシステム開発プロジェクトに関する考察
-ミャンマー政府機関向けシステム開発プロジェクトを通しての気づき-

北山 直弘


プロジェクト計画をリスクベースで立てることに異論を唱えるプロジェクトマネージャはいないだろう.今では一般的なオフショア開発でもリスクについて大いに議論され、マネジメントの工夫がされてきた.これまで実行されたプロジェクトから得られた教訓が蓄積,展開され,現在のプロジェクトマネジメントに反映されている.しかし,プロジェクトは多様化が進み,置かれている環境は不確実性が高まっており,難しさが増している.本論文では,今後増えていくと想定される発展途上国向けシステム開発プロジェクトのプロジェクトマネージャに向けて,筆者がミャンマー政府機関向けのシステム開発プロジェクトを通じて得られた教訓を紹介する.


ソフトウェアプロセス教育向け動機づけモデルをシステム理論に基づくSTAMP/STPAにより効果的に活用する手法の提案

日下部 茂、 梅田 政信、 片峯 恵一、 石橋 慶一


組織論的期待モデルをベースに定義した基準状態遷移モデルの拡張として,パーソナルソフトウェアプロセス(PSP)の教育コースを対象にした動機づけプロセスの標準状態遷移モデルが提案されている.そのモデルでは,PSP受講者を状態機械とみなし,動機づけに関わる状態と操作により動機づけプロセスを定式化している.このモデルは, PSP に関する概念やスキルの導入から定着成功や定着失敗までの過程の形式的な表現を可能とし,PSP教育の動機づけに着目した改善へ応用できるとされている.本発表では,このモデルを用いて実際の介入シナリオを生成する際に,システム理論に基づくSTAMP/STPAを活用することで,より効果的に改善シナリオを導く方法を提案する.


高生産性を実現するためのプロセス自動化の取り組み

熊坂 裕美


昨今の開発プロジェクトでは、競争が激化し予算の低下やスケジュールの短期間での実現をお客様より期待されるケースが増えている。大規模プロジェクトにおいて、予算・スケジュール共にタイトな状況では、PMは、高生産性を実現する方法について検討する必要が出てくる。当論文では、PMが、実際にプロジェクトの高生産性を出すために、要件定義からテストまでの開発プロセス全体において、自動化の仕組みを取り入れ、適用した結果についてその効果を論じる。


問題解決力の育成に向けた検討

黒木 弘司、 木野 泰伸


現実のプロジェクトでは,毎日大小様々な問題が発生する.そこで,プロジェクトマネージャは決められたことを決められた通りに行うだけでなく,日々発生する問題に自律的に取り組み,解決して行くことが求められる.本稿では,日本海難史上最大の惨事となった洞爺丸事故を題材に,事故の原因や対応策,再発防止策について尋ねた自由記述形式のアンケート調査を行った.調査により得られたテキスト型のデータはテキストマイニングの技術を用いて計量的に分析を行い,問題の原因や対応策,再発防止策について考える際にはどのような点に目を向けがちなのかなどの傾向を明らかにすることで,問題解決に必要となる能力を育成するための方法について考察する.


仕様変更における認識ギャップの分析と有効性評価

小泉 浩


ITプロジェクトが混乱する一因として,顧客側と開発側の仕様変更に対する認識の相違がある.特に複数のユーザ部門に関わる大規模な開発では要件定義の曖昧さ,長期の開発期間での要件の変更追加から仕様変更が多発する恐れがある.こうした問題を軽減するために,仕様変更が発生する認識ギャップについて分析することがプロジェクトの安定化に有効性があると考えた.認識ギャップの考え方を取入れてプロジェクトの事例で発生した仕様変更を分析し,その有効性について評価する.


新商品開発のための潜在的顧客ニーズの発掘
― CMVE 活用の有効性検証―

古賀 陽介、 古賀陽介、 廣田豊彦


新製品を企画するとき,顧客の立場に立って多様な観点から議論する必要がある.コンセプト・メーキング・バリュー・エンジニアリング(CMVE)は,多数のワークシートを利用して作業することで,新製品企画書をまとめあげるための手法である.著者らはプロジェクトマネジメント学会九州支部製造系ワーキンググループにおいて,CMVE の前半部分を試行した.その結果,4 件の新製品のアイデアが発掘された.


短期間でキーマンとなるお客様を最良の協力者とするための実践ノウハウ

小齊平 晃


様々な立場のステークホルダーがプロジェクトに参画することで,合意形成の難易度が上がっている.また,主要ステークホルダーであり,キーマンであるお客様の情報システム担当のプロジェクトまたはシステムへの関心度が低いことで,プロジェクトの推進に支障を来たすケースがある.本稿は,お客様キーマンの関心度を短期間で高め,自律して行動できる環境を作ること,環境作りを通して我々との信頼関係を構築し我々と一体感を醸成することがプロジェクトの円滑な推進に必要との考えの元,人事異動に伴う引継ぎからプロジェクト終結まで様々な施策をうち,他プロジェクトでも活用可能な施策をノウハウとして整理したものである.


超上流からテストまでの要件充足チェック施策による品質マネジメント

小島 建男、 金栄 早織、 三生 昭彦、 宮下 貴博


システム開発プロジェクトを推進する上で,大規模化・複雑化する顧客システムにおいて,①顧客要求仕様の確定遅延や漏れによる「工程・納期遅延」や「品質悪化」,②設計・テストで要件を網羅していることのチェック不十分によって,後工程での手戻りによる「コスト増」のトラブルが発生することがある.本稿では,要件定義工程で顧客要求仕様の充足度を見える化し,顧客と共に評価する「要件確定度チェック」施策と,設計・テスト工程で顧客要求仕様が設計に反映されていること・テストで確認できていることをチェックする「要件トレース」施策を提案する.2つの施策による要件定義・設計からテストに至る全開発プロセスでの要件充足チェックでの品質マネジメント効果を考察する.


計画を重視したプロジェクトマネジメントによる成功事例

小正 博子


プロジェクトを成功させるためのプロジェクトマネジメントは、どのプロジェクトにおいても常に考えられていることである。その中で、プロジェクトの規模・難易度が大きく、複雑になればなるほど、成功に導くプロジェクトマネジメントの役割、ミッションの難易度も上がってくる。本稿では、公共分野における大規模なプロジェクトにおいて、「計画」に重点をおき、プロジェクトの特性や背景、環境、リスク(課題)について、どのように計画に盛り込んで成功へのシナリオを作っていったかの取り組みを紹介する。契約前の取り組みとプロジェクト開始後における計画と計画に対するゴールの確認方法(見える化)などについて工夫した点を述べる。


EVMにおけるリソース管理指標の提案

今野 裕紀、 今野裕紀、 小野浩之、 堀内俊幸、 下田篤


EVMは,プロジェクトの状況を2つの効率指標でモニタし,目標達成するマネジメント方式である.2つの指標にはCPIとSPIがある.しかし,従来は2つの指標を同時にモニタするが,両者を関係付けて管理するケースは少ない.そこで,本研究ではCPIを生産効率の指標及びSPIを納期遵守のための指標として考え,この2つの指標をリソース管理の指標と結びつけることで,統合的に管理する方法を提案する.この方法では,SPIはCPIとリソース投入量の指標の積として表記できることに着目し,リソース管理の観点を加える点に特徴がある.リソース投入には準備期間が必要であるため,提案する指標として活用できることを実プロジェクトのデータで試行した結果について報告する.


ソフトウェア開発における国際的組織間知識移転
- オフショア開発の知識移転の巧拙に影響を与える組織属性 -

後藤 哲郎


一般的にソフトウェア開発を行う場合,一拠点に集まって開発を行うことが効率的だと考えられる.一方でコストを重視するソフトウェア開発ではオフショア開発と言われる国際的に拠点を分けてソフトウェア開発を行うやり方をとることが多い.このやり方に対してはコミュニケーションや品質といったプロジェクト・マネジメント上重大な影響を及ぼす要素についてさまざまなリスクを伴うと考えられる.特に国際的に拠点の分かれる組織間の知識移転については様々な制約があり,その巧拙が期待する結果に対して大きな影響を与えると考えられる.その影響を与える要因は何であるか,を開発相手国側(受け手)の組織属性に着目して明らかにしたい.


リスクマネジメントツールの改善活動とプラスのリスクに対する取り組み

酒井 理江、 斎藤 高秋


リスクマネジメントはプロジェクトを成功に導くための重要なマネジメント活動であり,現場でリスクマネジメントを実践するには有効なリスクマネジメントツールを効果的に活用することが求められる.プロジェクトを取り巻く環境の変化に応じてリスクをマネジメントするためには,リスクマネジメントツールの現場での適用状況を継続的にモニタリングし,改善していくことが重要である. 当社では,各種リスクに対する一連のマネジメント活動の支援ツールとしてリスクマネジメントツールを活用している.本稿では,事業部門の特性に応じた実施状況や意見要望等のモニタリングによりツールの改善を検討した活動と,その中で新たなツールを作成しプラスの影響を与えるリスクのマネジメントを強化した取り組みを紹介する.


プロジェクト計画のリスク評価とPM

佐藤 直樹


確率論的リスク評価 (PRA)は, 原子力発電所, 化学プラント,鉄道施設などの物理的システムの安全性についてのリスクを評価する上で有力な手法である.PRAの研究は米国の原子炉の安全性に関する研究の一環として, WASH-1400という暗号名(コードネーム)で1975年に公表された. 爆発事故のような事故のタイプが特定された場合でも, その事故が発生するまでにはさまざまな経緯, シナリオ, 一連の事象が存在する.リスクを定量化するためには, まずこうしたシナリオを列挙し, それぞれのシナリオを定量化しなければならない.情報セキュリティやプロジェクトマネジメントのエリアもこの点では物理的システムと同様である.本稿ではPRAのプロジェクトマネジメントへの適用を試みる.シナリオに基づくプロジェクト計画の破綻の定量化, すなわちコスト計画の破綻, 品質計画の破綻, 要員計画の破綻等プロジェクト計画の破綻のシナリオの定量化について論じる.本稿ではプロジェクト計画, 特にプロジェクトのコスト計画破綻のケースに焦点を当てて, PRAの適用によるリスクの定量的評価について論じる. またPMとしてどうすべきであったか. どうすればプロジェクト計画の破たんを未然に防げたかについても論じる.


ブレインストーミングによる作業効率向上および作業品質向上に関する考察

佐藤 雅子


プロジェクトを運用していくにあたり、最適なメンバーをチームに配置しかつ育成を行っていくということは重要な課題である。 本論文では実際にブレインストーミングを活用した育成を行った結果、それが作業効率や作業品質をどの程度向上させたのか。また、効果的なブレインストーミングとはどのようなものであったかについて分析し考察する。


上級PMが保有する資質の経年変化

佐藤 靖嗣、 磯部 匡志


当社ではコンピテンシー基準などに基づいてPM人材を認定し,PM人材に対して育成プログラムを実施している.無意識に繰り返される考えや行動のパターンである「資質」について,育成対象のPM人材がどのような「資質」を保有しているかについて全社レベルで傾向分析することにより,行動変容につながる育成プログラムを検討し構築するに繋がる.本論文では,上級PMと初級PMに資質調査を実施し,システム開発プロジェクトの上級PMと初級PMが持つ資質傾向について示す.


チームビルディングにおけるメンバの特性把握へのATA活用事例

志村 隆一


プロジェクトマネージャはプロジェクトを成功に導かねばならない.プロジェクトにおける成功阻害要因の54%はチームに起因する.メンバが多様化し短期間のプロジェクトが増加する現代において,プロジェクトマネージャは個々のメンバの特性を迅速に把握してマネジメントする必要がある.ATA(Active Team Analysis)は56の質問項目によりメンバの特性を分析する.システム開発プロジェクトにおいてATAを活用した結果,チームタスクの消化率が2.25倍に向上した.本論では,効果的なチームビルディングについて論じると共に,ATAによってメンバの特性を把握する手法とその活用事例について述べる.


PMBOKからプログラム管理体制を考える

須澤 久美子


複数のプロジェクトを管理下に置くプログラム管理は,参考資料が少なくプロジェクト管理ほど普及していないのが現実である。プログラム管理経験がなく、横断的に複数のプロジェクトを管理する組織へアサインされ、その組織の役割を整理することとなった。本稿は,PMBOKを参照し,組織を含めたプログラム管理体制及び役割分担を考えるプロセスを記述する.


オフショアソフトウェア開発プロジェクトのシミュレーション・モデル構築

煤孫 統一郎、 池田 心


ソフトウェア開発プロジェクトにおけるオフショア開発は一般的になりつつある.言語や文化の違いによる情報伝達が困難であること等,オフショア開発特有の問題があり,納期が短いプロジェクトの場合は,発注側の要員が現地に派遣されることが多い.これは経験的に行われていることであるが,要員の現地派遣の効果について検証した研究は少ない.本研究の大目的は,オフショア開発における要員の現地派遣の工期短縮の効果を,コンピュータ・シミュレーションによって検証することである.そのための前段階として,本研究ではオフショア開発をモデル化し,オフショア開発を表現するデータ設計を行った。このモデルの構築からデータ設計までを報告する。


インターネットバンキングシステムにおける大規模Scrum開発方法論の適用

鈴木 友也、 小堀 一雄


近年、アジャイルソフトウェア開発の1つであるScrumを大規模化する手法が注目・導入され始めている。特に大規模になりやすいインターネットバンキングシステムのような金融システムでは、堅牢性はもちろんのこと、User Experienceや柔軟性が差別化要素として重視されるため、Agile開発でより価値のあるシステムを構築することが重要になる。この要望に対応するため、筆者らは大規模Scrum開発で発生する問題を解決する方法論を考案した。本論文では筆者らが開発した大規模Scrum開発方法論をインターネットバンキングシステムの開発案件に導入した事例における工夫点や問題とその対策と通じて、今後大規模Scrum開発を適用する案件への知見を提供する。


顧客志向によるITプロジェクトのベネフィット確保に関する考察

関口 明彦、 関 哲朗


プロジェクトの目標は、計画されたQCDSの達成である。一方で、その創成母体、例えばITベンダは、プロジェクトの実施による顧客満足の獲得によって、当該顧客からの継続発注を期待することが多い。先行研究は、顧客のプログラムマネジメントにSIベンダが積極的に参画することが、顧客の利益創造と満足を獲得し、加えてSIベンダによるプロジェクトの成功確率の向上と継続発注によるSIベンダ側利益の獲得に対する貢献にすることをモデル化し、事例を参照することでこれを検証した。このモデルの1つの特色づけは、SIベンダによる積極的な顧客志向の導入である。顧客志向のビジネスの結果に対する影響については多くの研究者、例えば対象が異なるがNarver and Slater やKohli and Jaworski等、が言及している。本研究では、ITプロジェクトを実施する中でSIベンダ側の顧客志向を明確化することの意味と価値を検討し、顧客志向を取り込んだプログラム/プロジェクトマネジメントのモデルを提案する。


プロジェクトアセスメント指標を用いたセルフアセスメントの実践

高田 淳司


近年、高度化、複雑化するシステム開発プロジェクトにおいて、プロジェクトを成功に導くためには、プロジェクトの状態を定期的に評価し、課題の早期検知と迅速な対策実行を行う必要がある。本論文では、過去のベストプラクティスを分析して作成し、プロジェクトの状態を評価するために用いるプロジェクトアセスメント指標について説明する。また、その指標を用いたアセスメント手法とそのアセスメントプロセスを運用することによる効果、改善結果について紹介する。


システム開発プロジェクト立ち上げのための「モノづくり道場」

高橋 晴花


企業のITシステム開発に際し,ITベンダは「要件定義」から参画し引き続き「システム開発」に加わることが多い.「システム開発」は「要件定義」の内容に基づいて進められるため,ITベンダは要件に応じた技術を使いこなすための準備を開発に先行して進めることが重要であるが,備えが十分ではなく円滑にプロジェクトを遂行できない例もある.そこで,プロジェクトが準備作業を着実に実施できるよう,開発・テスト環境と教育カリキュラム等を標準化し整備・活用する「モノづくり道場」施策を実施した.モノづくり道場にて準備を着実に行えたプロジェクトは,円滑にシステム開発プロジェクトが発足し,コストオーバーランは発生していない.


新任リーダーによるシステム移管プロジェクトにおける課題と対策の考察

高柳 雄太郎


 アプリケーション開発においてPMを始めて経験する新任リーダーは、小規模システムの移管など、シンプルな要件で開発規模の小さい案件を任されるケースが多々ある。システム移管プロジェクトでは、現行システムの設計成果物が陳腐化していることもあるため、本稿では現行システム側の成果物品質が低い場合の対策として、問い合わせ管理簿、課題管理と実装を主軸として既存システムの仕様を把握するアプローチを新任リーダーとして試みる。  本手法を適用した結果、移管後のテスト計画時に問題の多い機能を重点的にテストすることが出来るなどのメリットがあった。


事前リスク検討プロセスの取組み

高山 公章


NEC のシステムインテグレーション部門における組織的プロジェクト管理活動の一環であり,リスクアセスメントとリスクの見える化による「事前リスク検討プロセス」にPMO の立場から取り組んだ.本稿では,「事前リスク検討プロセス」の概要を説明し,「事前リスク検討プロセス」活動において蓄積したデータからプロジェクトのリスクを概観したので紹介する.


欲求連鎖分析を用いたステークホルダーエンゲージメントマネジメント支援

竹山 侑輝、 金子侑矢、 加藤和彦


近年,多くのステークホルダーがプロジェクトに関わることになり,ステークホルダーの参画意識の希薄,利害衝突等の課題が多くなっている.そのためステークホルダーマネジメントの重要性が増している.しかし,現状では,ステークホルダーの参画意識の希薄や利害衝突等の課題を防ぐための実用的なルールやツール,方法が少ない.そこで本研究では,ステークホルダーの欲求と行動の関連性に着目し,欲求連鎖分析を適用した.更にステークホルダーの欲求の強弱の推量を加えたステークホルダーエンゲージメントマネジメント支援方法を提案した.そして,事例プロジェクトのデータを方法に適用し,欲求の可視化を試みた.


プロセス分析・診断はどこまで簡単にできるだろうか?

田中 一成


ISO/IEC15504の自動車産業向け派生モデルであるAuomotiveSPICEは、欧州自動車メーカを中心に活用されている。組込みソフトウェア開発において有効なプロセスモデルではあるが、プロセス改善を目的としたアセスメント手続きにはそれなりの時間とコストが発生する。PMに気軽にプロセス改善に取り組んでもらうためにプロセス分析を実施する時間とコストに着目した。分析・診断はどこまで簡単にできるだろうか?簡単にすると何が起きるか?プロジェクトリスクに着目した簡易プロセス診断手法について発表する。


プロジェクトマネジメント実践研修における,ディスカッションを活性化し,気づきを増やす取り組み

田中 芳彦、 田中芳彦、 山崎伸晃、 坂上慶子


2016年度春季大会で,当社のプロジェクトマネジメント基礎研修(入社1~4年次)の目的を達成するために,ワールドカフェによる対話の考え方を導入したところ,受講者が自発的な姿勢に変化し,気づきが増えたという成果を報告した. この成果は、本研修用に改良したワールドカフェのプロセスによるものである.入社5~6年次になると視点を高くして物事を俯瞰する姿勢が期待される.そこで,基礎研修の上位にあたるプロジェクトマネジメント実践研修では,プロジェクト状況を俯瞰し,全体像を見据えたリスクの抽出と対応策を検討する演習を行っている.物事の捉え方は人により異なるので,ワールドカフェによる対話を導入し,各人の独自の認識を共有することで気づきが増えると考えたが,仮説どおりにはいかなかった.本稿ではその成果と考察結果について報告する.


ソフトウェア信頼性評価のためのNW.jsに基づくアプリケーションソフトウェアの開発

田村 慶信、 田村慶信、 山田茂


ソフトウェア開発のテスト工程は,ソフトウェア品質を定量的に評価するだけでなく,ユーザに対するリリース(出荷)時期の決定にも関係することから,非常に重要な工程となる.従来から,テスト工程におけるソフトウェア品質を動的かつ定量的に評価するための数理モデルとして,ソフトウェア信頼度成長モデルが使用されてきた.本研究では,ソフトウェア信頼度成長モデルに基づくソフトウェアツールの開発を通して,NW.jsを適用したアプリケーションソフトウェアの実装事例について紹介する.本開発ツールの紹介を通して,研究において利用してきた統計言語Rのソースコードを有効に再利用できることを示す.さらに,実際のフォールトデータを利用したソフトウェアツールの実行例を示す.


地域防災活動を通じた地域コミュニティにおけるソーシャルPMの有効性に関する考察

千田 貴浩


大規模災害に対して、国や都道府県・市町村などの地方自治体による対応(公助)だけでは限界があり、自分の身を自分の努力によって守る(自助)とともに、地域のコミュニティが互いに協力し合いながら、防災活動に組織的に取り組む(共助)が実効性のある対策として求められている。本稿では、2016年度に実施した地域の防災訓練を事例に、地域コミュニティにおけるソーシャルプロジェクトマネジメントの有効性について考察する。


システム更改案件を成功に導くためのプロジェクトマネジメント手法の一考察

長木 大志


既存システムの機器サポート切れ、既存システムの陳腐化に伴い、お客様のご要望によりシステム更改が必要になる。最近のシステム更改では、予算の都合上、システムを新規構築するより、既存システムをスペックアップした新基盤にそのまま移行して再構築する機会が多くなっている。今後も、より安く効率的にシステム更改の出来るシステム再構築が増えると考えられる。今回、システム再構築によるシステム更改案件を成功に導くためのプロジェクトマネジメント手法の一考察をまとめる。


大規模プロジェクトにおける要件変更への対応

塚本 純平


基幹システム刷新などの大規模・長期間プロジェクトにおいては,新システムの要件を正しく定義できない,あるいは要件の追加・変更が発生することがある.これは,旧システムの知識が継承されていない・ドキュメントがメンテナンスされていない等の理由や,長期間であるがゆえに開発期間中に法制度・市場環境が変わることに起因する. 一般に,プロジェクトの工程が進むと手戻りの工数が大きくなるため,上流工程で品質を確保し下流工程での手戻り低減を図るべきである.しかしながら,前述のようにシステム構築当初において「正しい」要件が出せない,あるいは構築当初とその後で要件が変わってくることがある. 本論文では,このようなプロジェクト事例の紹介と,対応方法について考察する.


コミュニケーションが鍵となるステークホルダー・マネジメント

塚本 真衣


プロジェクトの開発拠点のグローバル化や複雑なソリューションが増えていくにつれて,ステークホルダーが多様化してきている.プロジェクトを健全に遂行していく上では,こうした多様化するステークホルダーとのコミュニケーションを通して,プロジェクトへの協力者を増やすことが重要である.そのためには,相手によって伝える内容の質や量などを柔軟に変化させていくといったコミュニケーションにおける工夫が必要である. 本稿ではこうしたステークホルダー・マネジメントにおけるコミュニケーションの鍵を紹介していく.


振り返りプロセスを用いたプロジェクト成功確率の向上
― KPT分析ツールによるデータ蓄積と,SIナビゲーションを用いたナレッジの活用 ―

道崎 清一郎


SIプロジェクトにおいて,納期遅延や品質悪化はお客さまからの信頼を失い,自社の損益に影響をもたらす.PMのスキル,時間の効率的な活用,問題発生防止のためのプロセス確立など,プロジェクトの成功確率を向上させるために対処するべき課題は多い.その中で特に次の三点について検討を行い施策を講じることが,問題発生防止に最も効果があると考えた.「Ⅰ. ノウハウやトラブルシューティング事例をナレッジとして蓄積し,同じ失敗を繰り返さない」「Ⅱ. プロジェクトの属人性を少なくする」「Ⅲ. ナレッジをより確実な方法で,共有・活用する仕組みが必要」これらの課題に対して,プロジェクトを振り返った際の教訓を,ナレッジとして共有する施策を検討した.具体的には,振り返り会議の義務化,振り返りデータの分析と蓄積,AIを用いたデータ活用である.これらを一連の振り返りプロセスとして活用することで,経験が不足しているPMのスキル補完,QCD目標の達成に貢献することができた.


自治体基幹システム構築における統合的なマネジメント

永岡 美也子


自治体基幹業務の新システムへのリプレースでは,大規模な法改正を機会とした場合が多く,複数の自治体を同時期に切替える必要がある. このようなプロジェクトの運営では,各団体の個別のプロジェクト管理だけではなく,①スコープの共通化と標準化②プロセスとリソースの最適を図る統合的なマネジメントが重要である. 推進中の番号制度プロジェクトにて,その管理手法としてプロジェクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)を活用し,成果を挙げている.


現場改善のプラクティスをプロジェクト遂行に適用した事例紹介

永野 一成


ソフトウェア開発のプロジェクトも複数の人の営みです。「リーダーとメンバー間、メンバーとメンバー間の関係の良好さ」「メンバー一人ひとりの積極性」などは、品質や生産性を大きく左右するという仮説のもと、これらをよい方向に倒すために、当社が培った現場改善のプラクティスを応用し、手応えを感じている事例を紹介します。「5分でリスクの芽をつみとる朝会」「人を動かす手間暇かけない見える化」「ポジティビティを高める感謝の使い方」など、具体的な形で説明します。


潮目モニタリングによる失敗プロジェクト防止の取り組み

新田 勝宏


情報システム構築プロジェクトにおいて,システムに求められる要件の高度化・複雑化に伴い,プロジェクト遂行中に大小様々な変化が発生する.特にプロジェクトの根底に関わるような大きな変化・解決困難な変化は漏らさず把握し,早期に適切な対策を行うことが重要である.こうした大きな変化・解決困難な変化をプロジェクトの潮目と捉え,この潮目の検知や対策が遅れると,プロジェクトに与える悪影響は大きくなり,リカバリに費やす時間やコストも増大する. 本論文では,プロジェクトにおける潮目の有無を定期的かつ組織的にモニタリングし,潮目が起きているプロジェクトにおいて効率的な対策の検討から実施・効果確認までを行う取り組みを一部事例も交えて紹介する. 本取り組みを開始後,難易度の高いプロジェクトにおいても潮目に相当する変化から生じる課題をお客様と共に解決し,コストが悪化した失敗プロジェクトの発生を抑止している.


コミュニケーションモデルから見た若年PM教育の強化策提言
-学生アンケートから分析するコミュニケーション改善点-

野元 拓也


プロジェクトマネジメントに際して,ステークホルダーとのコミュニケーションが重要であることについては論を待たない.しかし実際の現場ではユーザと開発者との間で仕様に関する齟齬が発生し問題となるケースが後を絶たない.その傾向は特に若年層のプロジェクトマネージャにみられる. 従来シャノン&ウィーバーによる「コードモデル」,スペルベル&ウィルソンによる「推論モデル」が提唱されたが,インターネット/SNSの発展によるコミュニケーションツールの変化に伴い新たなモデルを構築し,現在の問題に対応する必要がある.  本論文では学生を中心にSNS活用状況のアンケートを実施.その内容から従来の情報伝達モデルの改善ポイントを探り,若年層へのプロジェクトマネジメント教育の在り方を提案する.


哲学から見た知識の形によるプロジェクト知識の技術的な一考察

橋本 正明、 橋本正明、 栗山次郎、 堀川恵、 石橋慶一、 泉優佳理


ソフトウェアの開発では,プロジェクトの裾野が広がり,納期も短くなってきている.そのため,プロジェクトに現れる知識を関連分野の全てに渡り,さらに関連製品のサプライチェーンにそって統合して扱うための能力が,プロジェクトの成否や品質に大きく影響するようになってきた.一方,著者らは,存在論や構造主義,暗黙知などの哲学理論を応用して,知識の形(アーキテクチャ)を研究してきた.この知識の形を適用して,プロジェクトに現れる知識を統合して扱うための方法について,技術者トレーニングや専門家知識の分析,コミュニケーション,コンピュータ言語などの技術的な面から考察し,今後の課題を述べる.


知識エリアに基づく情報伝達の問題分析と伝達項目補完における教訓の提案

林 幸宏、 田隈 広紀


プロジェクトで発生する多くの問題は、メンバ間のコミュニケーションにおける情報の欠落、誤認、対立に起因している。本研究では、情報伝達の定石である5W1Hでは情報の具体性に不足があると考え、実務経験者6名の事例と10の知識エリアを基に、情報伝達における問題傾向を分析した。また、それを基に伝達事項を補完するコミュニケーションテンプレートを考案し、疑似プロジェクトにて試行実験を行った。その結果、伝達事項の不足が解決され、伝達効率も低下しないことが確認された。今後は、実プロジェクトでの提案の検証とより効率的な情報伝達プロトコルの確立及び、実用化に向けたツール・システムの開発が求められる。


資材管理の体系化による品質向上のアプローチについて
-資材管理方法の構築-

原野 剛、 比護 万紀夫、 木原 純平


システム開発プロジェクトにおいて、アプリケーションの構成管理(資材管理)は避けては通れない管理項目の一つである。しかしながら、資材管理に苦戦するシステム開発プロジェクトをよく耳にする。これは、資材リリースの複雑さ・資材修正回数が多いことによる管理の煩雑化・資材修正作業の輻輳など、様々な要因がある。本論文では、あるシステム開発プロジェクト(システム更改プロジェクト)において、他のプロジェクトでの流用を見据え、可能な限り汎用的かつシンプルになるような管理方法を検討し、実際にその管理方法でプロジェクトを進めた。結果として、本プロジェクトにおける資材管理の品質は直前のプロジェクトと比較すると格段に向上した。これは、偶然の結果ではなく、実践した資材管理方法の確立による必然の結果であると考えている。本論文を通して、より多くのシステム開発プロジェクトにおいて資材管理の品質、及び資材の管理コストが改善されることを願う。


超PMの育成  ~真のPMを育成するには~

廣重 法道、 堀 昭三、 吉田 剛、 片峯 恵一、 前田 修、 野元 拓也、 中村光善


企業では多くの問題プロジェクトが発生している.その為,高度なプロジェクトマネージメント知識とスキルを有するプロフェッショナルとしてのプロジェクトマネージャ,すなわち超PMの存在が求められている. 一般的にPMの知識とスキルは次の3段階を経由した成熟プロセスを辿ると考えた.大学や入社後に学ぶ初歩的な知識とスキルを習得する初歩段階(初歩PM).次にPMBOK等の標準的な知識と一定のPM実務経験を有する段階(実践PM).最後は,豊富な知識と経験,プロフェッショナルマインドを備えて,難関プロジェクトのPMに従事してもトラブルの未然防止や問題発生後の適切な対処が出来る段階(超PM)である.ところが,その超PMを育成するための一貫した方法論は未整備である. 本論文では,超PMへの成熟プロセスと,その育成手法を検討した.


多様化するステークホルダーマネジメントへの対応

広瀬 隆之


近年のITプロジェクトの複雑化の中でも,ステークホルダーについては多様化が進み,プロジェクトの複雑化の大きな要因となっている.このため,ステークホルダーを把握・分類し,うまくコミュニケーションを図るステークホルダーマネジメントが,プロジェクト成功の重要な鍵となっている.本稿では,筆者が実際に参画したプロジェクトを例に,どのようなステークホルダーマネジメントが必要なのかを論じる.


ソフトウェア開発プロジェクトの課題分析― TRIZに基づく課題解決に向けて―

廣田 豊彦、 廣田豊彦、 古賀陽介、 大田黒俊一


ソフトウェア開発プロジェクトはしばしば遅延する.その遅延には様々な要因が存在する.著者らのワーキンググループで討論した結果,152項目の課題が列挙された.それらをキーワードに基づいて分析し,一つの根本原因「タスクが見切り発車された」に到達した.再度討論した結果,その根本原因が発生する理由43件を列挙した.その理由は6つにグループ化され,そのうちの4つが根本原因と矛盾していた,その矛盾を解消するのは容易ではないため,技術的矛盾を解消するための手法であるTRIZを応用することにした.TRIZの矛盾マトリクスからいくつかのTRIZの発明原理が検索され,そこから具体的な解決策を導き出した.最後にその解決策をフローチャートにまとめた.


Connected Vehicleシステムのサーバサイド開発における、プロジェクト特性に応じたプロジェクトマネジメントの実践

深田 耕司


近年のシステム開発プロジェクトは、技術面・開発手法面でも、提供するサービス内容面でも、また、利害関係のある組織という観点でも、いずれにおいても複雑化・多様化が進んでいる状況にある。このような状況において、システム開発プロジェクトを成功裡にプロジェクトマネージするためには、プロジェクト特性に応じたマネージを実践することが、より重要になってきていると考える。本稿は、Connected Vehicleシステムのサーバサイド開発プロジェクトにおける、プロジェクト特性に応じたプロジェクトマネジメントの実践についての事例研究である。


SI契約における判例の分析と考察
- プロジェクト・マネジメントにおける特徴と留意点 -

福田 祥久、 河野誠、 三ッ目淳一


顧客が作業結果に満足しないため民事訴訟を提訴した場合,プロジェクト・マネジャー(PM)はどのように対処すべきであろうか.高度なITソリューションの活用が強く求められる変革の時代において,システム・インテグレーション(SI)ビジネスを成功裡に遂行するためには,PMにとって,プロジェクトマネジメントおよびIT関連の知識のみならず,契約の締結から終了までの契約に関する法的知識も求められるのではないだろうか.本稿では,SI契約における判例を分析・評価し,PMがプロジェクトの計画・実施において,法的側面からも円滑に推進することを願い,判例の分析結果と動向を踏まえ,プロジェクト・マネジメントにおける特徴と留意点を明らかにすることが目的である.


サービスマネジメント領域の再組織化と創発アプローチ

藤田 雅人


本稿は,ITILのライフサイクルマネジメントを補完する2つのアプローチを考察し,新たなサービスマネジメントの地平を築く.第一のアプローチはサービスマネジメント領域を非平衡開放系システムとして再組織化するものであり,第二のアプローチは,オートポイエーシスによって非線形の閉域を形成し,創発をマネジメントすることである.この技法によって,サービス運用起点の正準化に貢献し,創発がもたらす影響把握と,サービスマネジメント人材の育成に貢献することができる.第一のアプローチと第二のアプローチは相互補完的であり,サービスマネージャーの経験を拡張するための有功な手法であると考察された.


分散型バージョン管理システム向けブランチ戦略に関する考察

藤原 一樹、 佐藤裕介、 堀野智久


近年,広く知られている分散型バージョン管理システム向けのブランチ戦略にはgit-flowなどがあるが,既存の単一のコードベースに対する変更にフォーカスしている.しかし,エンタープライズアプリケーションの開発初期段階では,複数チームによってスクラッチの状態からソースコードの開発が進められるため,ブランチ戦略についてテーラリングが必要となる.我々は,git-flowをベースにテーラリングしたブランチ戦略を2パターン作成し,それぞれ別のプロジェクトに適用した.結果,テーラリングしたブランチ戦略に基づき,いずれのプロジェクトでも問題なく開発を完了できた.本論文では,二つのブランチ戦略を比較した結果から,プロジェクトでの作業負荷を考察する.


ソフトウェアの品質に影響を与えるプロセス・プロダクトメトリクスの分析と有効な活用方法の考察

古村 仁志、 佐藤 孝司、 下村 哲司、 橘 克一


ソフトウェアの出荷後に市場で欠陥が顕在化すると, CSの低下や修正にかかるコストなど, 企業活動に大きな影響を及ぼしてしまう. このリスクを低減するために, 筆者らの組織ではこれまで, ソフトウェアの開発中に, レビュー工数, テスト項目数といったプロセスメトリクスと, ソースコードの行数や複雑度といったプロダクトメトリクスを指標とし, 基準値やしきい値を設定して製品を層別することで, 出荷後に欠陥が顕在化するリスクを最小限とする管理方法を検討してきた. 今回, 蓄積されたデータを再検証することにより, 従来より適切なプロダクトメトリクスのしきい値について知見を得ることが出来た. 本論文は, 上記結論の導出過程を紹介する.


PRINCEモデルを適用した要求獲得アプローチのためのユーザ要求分析

牧野 友祐、 加藤 和彦


情報システム開発プロジェクトの要求獲得アプローチにおいて,下流工程にならないと獲得が困難な要求が存在する.先行研究では,要求の品質特性によって,獲得できる時期を考慮したPRINCEモデルが提唱されている.そこで本研究では,PRINCEモデルの発展的適用を目指し,要求の共起性と獲得するまでのアプローチに着目し,相関関係の分析を試みた.まず,実プロジェクトの要求管理表から要求を獲得するまでのアプローチを分析した.次に,品質特性別に分類した要求に相関ルールマイニングを適用し要求の共起性を抽出した.本稿では,研究の基本的概念及び分析方法や手順,抽出結果について述べる.


ミャンマーITエンジニアに対するテスト技術の教育事例

町田 欣史、 小林由依


ミャンマーは、豊富な労働力とコストメリットがあるため、多くの日本企業が進出を始めている。ソフトウェア開発においても、オフショア開発の新たな拠点として実装やテストを委託するプロジェクトが増えている。一方で、その技術力は日本が求める水準に達しているとは言い難い。そこで我々は、ミャンマーのソフトウェア開発会社にソフトウェアテストの教育を行った。最初にスキルレベルを測った上で研修メニューを整理し、知識を詰め込むより先にテストの目的を理解してもらうことを主眼に置いた。その上で、演習形式の研修を通して考える力をつけることを目指した。研修の最後には修了判定テストを行ってスキルを評価し、スキルが向上したことを確認するとともに、今後の課題も明らかになった。


大規模プロジェクトにおける現場状況の可視化と迅速な情報連携に関する事例紹介

松尾 聡、 掛川悠


開発プロジェクトを適切にマネジメントするためには、現場の状況を正確かつ迅速に把握することが必要不可欠である。しかしながら、大規模かつ繰返し開発が継続するプロジェクトでは、参画する要員数の多さ、組織構造の多段化、要員入替り頻度の高さにより以下の課題が発生する。 ・組織間や担当間での役割と責任範囲が曖昧になる ・プロジェクトマネージャーが現場の状況を正確かつ迅速に把握することが困難になる ・現場担当者の入替りにより運用ルールの「徹底」が非常に困難になる これまで、約1000人規模の継続開発プロジェクトを15年間運営してきた経験より、上記の課題に対して、責務、情報連携、運用維持の観点でそれらを解決してきた事例を紹介する。


AIを活用したPM判断支援の一考察

松尾 美貴


当社は,2016年にAIを用いた「リスク顕在化予測モデル」「定性データによるプロジェクト悪化予測モデル」の2つを適用し,予兆監視システムの運用をスタートした。このシステムは,プロジェクトマネージャーが定期的に行うリスク対応報告とプロジェクトQCD状況報告を元に,AIによりプロジェクトの悪化予測を行うというものである。運用開始から1年を経て,問題プロジェクトは減少傾向にあるものの,予測を軽視し判断ミスをするプロジェクトマネージャーが存在するのも事実である。そこで我々は、現行モデルの主観的データに,客観的な第三者評価「プロジェクト監査結果」を追加することにより,現場プロジェクトマネージャーの判断支援をAIで強化できないかと考えた。プロジェクトマネージャーの判断支援強化のために,新しく導出したモデルの持つ意味と期待効果,今後の展望について考察する.


女性の外見がプロジェクトの生産性に与える影響に関する一考察

溝口 愛梨、 下村道夫


近年、女性の外見(メイク、髪型、服装等)は雑誌やテレビ、SNSなどの影響で多様化してきている。一方,組織で働く女性の外見が組織の生産性に影響を与えると言われている.例えば,外見が優れている女性のいる職場ではモチベーションを含む生産性が向上したという報告が多数見受けられる.一例としては,黄色い服装は明るく,社交的,打ち解けやすいという印象を与えると言われている.これを踏まえて,企業の業績向上を狙い外見を重視した採用を行う企業も存在する.そこで本稿では,若い女性の外見を構成する要素を整理した上で,プロジェクトの特徴(メンバーの特性など)に応じて,生産性向上のために適した外見とはどのようなものなのかについて検討中の考察内容について報告する.


情報システムの運用設計の重点ポイントに関する一考察
- 現場の運用PM(IT-SM)から開発PMに贈る活きた提言 -

三橋 彰浩、 松井 太郎、 本間 智治、 小針 清彦、 菊地 奈保子、 中島 雄作


 情報システム部門にとって,保守運用のTCO(Total Cost of Ownership)削減は,主要課題の一つである.筆者らは,システム開発時の運用設計を改善することで,運用コストを抑えられないかと考えた.  運用設計の不備により発生したトラブルの原因を分析したところ,開発PMはお客様要件の優先度を高くし,保守運用時に係る要件は申し送りにする傾向がわかった.そこで,開発PMが軽視しがちだが,運用時に影響が大きい運用設計のポイントを6つ挙げた.  本稿では,情報システムの運用設計の重点ポイントに関する一考察について述べる.


進行中タスクを制限することの効果
~CCPMゲームコンセプトを実プロジェクトに適用した事例を通して~

峯 肇史、 村川 誉幸、 朝稲 啓太


プロジェクト管理手法の1つであるCCPM(Critical Chain Project Management)と聞くと、バッファを管理するという手法だと認識される方が多いと思うが、実はCCPMを適用するに当たって、バッファを管理する前に適用すべきルールがある。その一つが「進行中タスクを制限する」というルールであり、本ルールはPM学会九州支部TOC-WGで作成したCCPMゲームのコンセプトの1つでもある。本論文では、進行中タスクを制限するというルールを実際のプロジェクトに適用した実例について、タスクを制限した背景/手順/実際の効果/今後の課題について述べる。最終的な結果として、バッファ管理を行なわなくても、進行中タスクを制限するだけで十分な効果を得ることができた。この効果を理解して頂き、ぜひ実際の多くのプロジェクトに展開されることを期待したい。


プロジェクトを成功に導くための意識改革とプロセスの見える化

宮﨑 孝三


プロジェクトマネジメントを成功に導くには,様々な要因がある.プロジェクトを確実に推進していく要因として,著者は、メンバーの推進力を強化するための意識改革と,プロジェクトを効率的に推進するためのプロセスの見える化の2点が重要な要因と考えている.第1の意識改革は,自己の意識を変え能力を引き出し自信とやる気を育む取り組みで,推進力を強化するものである.第2のプロセスの見える化は,プロジェクトや業務のプロセスについて全員が共通の認識を持つことにより、プロジェクトを効率的に遂行するための手法である.これらの手法により,納期60%削減,工数30%削減,経費30%削減,研究モデル手法の完成等の大きな成果が得られている.


ユーザ系IT企業における社内プロジェクトマネージャ認定制度導入の理想と現実

宮田 寛子、 幡多 理香


優秀なプロジェクトマネージャを育成するため,多くの企業で「社内プロジェクトマネージャ認定制度」を導入している.ユーザ系IT企業である当社も昨年度,制度を設計,試行した.ITスキル測定の仕組みや求められる人材像の設定による目標明確化などのスキル向上施策を数年間継続したうえで,満を持してのプロジェクトマネージャ認定制度の試行であった.しかし試行の結果見えてきた現実は,制度設計時の想定と大幅な乖離があった.本稿では,乖離の分析によるユーザ系IT企業におけるプロジェクトマネージャの現状と育成ロードマップ,それを支えるプロジェクトマネージャ認定制度の在り方を考察する.


海外生産拠点システムの短期構築と早期現場定着の実現

村上 勝義


日本製造業の多くはグローバル展開を行っており,生産の主力工場を国内生産拠点から海外の生産拠点に展開するといった考え方に変化してきている.そのため,海外生産拠点にて標準化システムの構築・新規システム導入が求められている.海外生産拠点への新規システム導入の場合,モデルとなる標準システムが存在しないため,多大なシステム構築期間が必要となるが,本プロジェクトでは,短納期・早期現場定着が求められた.この要求に応えるために,最適な業務標準化フローの作成,開発・テスト工程の短縮を目的とした上流工程での取り組み,現地オフショアを活用した教育体制の強化を実施した.結果,短納期でのシステム導入,導入後の早期現場定着に成功した.この成果から,海外生産拠点への新規システム導入における本手法の有効性は立証できる.


大規模SIにおけるステークホルダーマネジメントの事例報告

村山 雅俊


プロジェクトのQCD確保にあたり,PMは状況をタイムリーに把握し適切な対策を迅速にうつ必要があるが,実現にあたってはお客様・メンバ・外部組織との良好な関係が必須の条件となると考える. 本稿では,ステークホルダーとの良好な関係構築を実現するにあたり,特に顧客との関係構築において,マーケティングの考え方を一部取り入れた顧客・市場・行動分析を行うことにより,QCDに直結するスコープ調整の失敗,開発スケジュール,コスト感の認識ずれといった重要事項について進め方や考え方を実体験を元に報告する.


N字型開発モデルとSoftware Engineering活用による要件変更対応開発プロセス一考察

森下 隆治


System Of Record領域のIT戦略化において、既存システム刷新や、要件変更対応、トレーサビリティ課題など依然として多くの課題を抱えており、大規模projectの成功率は依然として低い傾向である。 既存システム刷新化のアプローチとして、リバース工程とV字型開発を統合したN字型開発モデルアプローチの活用並びに、要件変更に対応する為のソフトウエアエンジニアリング活用した開発プロセス選択によるプロジェクト課題解決の一考察をPM視点で提言する。


反復型開発における経済的バッチサイズの推定方法

谷口 和幸、 谷口和幸、 下田篤


反復型開発では,数週間などの反復期間を決め,この期間で開発可能な範囲を開発することが一般的である.しかし,反復期間を先に決定し,これに見合う開発単位であるバッチサイズを決定しているため,トータルコストの観点から有利な条件にはなっていない可能性がある.そこで,本研究では,反復期間が短くなると増加するリリースのためのオーバーヘッドコストと,反対に減少する統合や欠陥修正に伴う規模比例コストの合計から,経済的バッチサイズを推定する方法を検討する.本発表では,具体的な開発事例について,バッチサイズを変更した場合のコスト比較から経済的バッチサイズを推定した結果と,その変動要因について報告する.


システム開発プロジェクトにおける個人EVM適用での作業平準化
―働き方改革に応えるプロジェクトマネジメント ―

安岡 良太郎


システム開発プロジェクトは大規模化・短期化する傾向にあり,長時間労働が恒常化している.一方で,日本では働き方改革により長時間労働の抑止や年次有給休暇の取得促進が進んでいる.システム開発プロジェクトでは,進捗を回復するためにやむなく長時間労働となることが多い.働き方改革を推進していく上では,従来の手法ではない回復手法やプロジェクト推進を取らなければいけない場面にある.本論文ではこの状況において,EVMの手法を個人に適用することで,要員の作業負荷をどのように平準化していくかについて,自身の事例を元に述べる.


アジャイル開発プロジェクトにおける新人の成長事例
~正統的周辺参加を手がかりとして~

山内 貴弘、 実川康則、 赤間 奏見、 椎名愛里


変化の激しいビジネス環境に適した開発手法としてアジャイル開発プロジェクトが注目されている.しかしアジャイル開発プロジェクトでは, その卓越性故に, 誰もが参加できるというものではない. 今回, 取り上げる事例は, 先進的なお客様での高度なスキルが前提とされるアジャイル開発プロジェクトに参加した入社一年目の新人が, 職場経験がまったくのゼロの状態から, どのようなチームの支えがあって, いかにスキル習得としたかを詳細に確認することによって, あるべき学習過程の一例を提示するものである. 分析フレームワークとしては, 新人とその状況に埋め込まれた学習を分析するものとして正統的周辺参加を用い質的に分析した.


組織的プロジェクトマネジメントプロセスの標準化と実践による不採算プロジェクト発生抑止への取組

山口 京子


当社(NECソリューションイノベータ)はNECグループの7社を統合して誕生した。統合前、各個社では断続的に不採算PJが発生している状況であった。 新会社にてこの課題に取り組み経営基盤を強化するため、「PJリスクの事前検知・課題対処を会社組織の責任で実行し、PJリスクの極小化を実現する」プロセスを「組織的PJマネジメント」として標準化し展開した。 本稿では、組織的PJマネジメントプロセスの目的や概要と、プロセスの主体である事業ラインの役割、運用を支えるPMOの役割と工夫点などを紹介する。また、不採算PJの更なる抑止に向けた課題についても報告する。


サービスデザイン手法を取り入れたスクラム開発プロセスの構築

山崎 真湖人、 小堀一雄


近年、多様なステークホルダーの意見や評価を取り入れながら新規サービスの検討を進めるサービスデザインのアプローチが広まっている。一方、一般にアジャイルソフトウェア開発手法ではユーザー要求を把握しながら妥当性の高いサービスを開発可能とされるが、実際にはプロダクトオーナーの知識やスキルの制約により、そのような実践が困難であるという状況がある。 我々は、スクラム開発におけるプロダクトオーナーの活動をサービスデザインの各種手法を用いて支援することで、多様なステークホルダーの知識や考えを効果的に取り込むサービス開発プロセスを構築している。本論文では、そのプロセス定義の取り組みおよび適用事例に関する考察を報告する。


危険予知訓練を活用したITプロジェクトにおけるリスク抽出能力向上への取り組み

由崎 令子、 石川浩通、 藤原良一


ITプロジェクトの成功には,リスク・マネジメントが重要な鍵となる.そこで当社では,過去のトラブル事例の教訓を全社に展開し,リスク・マネジメントの入り口であるリスク抽出能力を向上させる取り組みを行っている.全社員に教訓を伝授するために,全社員に周知されている安全衛生の危険予知訓練(KYT)と,プロジェクトの状況を疑似体験させるショートケースメソッドを組み合わせた手法を確立し,全社で実践した.実践した結果,抽出率の高い/低いリスクの傾向や想定リスク以外のリスク抽出も多く見られるなど,興味深い結果が得られた.本稿では,これらの取り組みと実践した結果について報告する.


効果的な要求事項収集のアプローチ

吉津 充晃


プロジェクトの成功ためには、スコープベース・ラインに含めるに十分な要求事項を引き出すことが重要である。効果的な要求事項収集を行うには、ステークホルダーへ積極的に関与し、適切なアプローチを実施することが重要と考え、実検証した要求事項収集の技法とその成果を整理した。結果として、ハイレベルな要求事項収集においては、ステークホルダーを特定した上で行うインタビュー形式によるアプローチが最も効果的であるという結論を導き出した。


M&Aのプログラムマネジメントとプロジェクトマネジメント

吉田 憲正


M&Aの成立と成功は異なる.M&Aの本当の評価は,M&Aプロジェクト後(PMI:Post Merger Integration)の状況も含めて評価されるべきである.M&AをM&Aプロジェクトを含むプログラムマネジメントの視点から整理し,その成功の要諦である,プログラム・ステークホルダー・マネジメント,プログラム・スコープ・マネジメント,プログラム・ステークホルダー・マネジメント,プログラム・ガバナンスについて考察する.


TRIZ手法を用いたプロジェクトマネジメントの問題解決

吉田 剛


TRIZは技術矛盾問題の解決アイデア創出に効果的な手法である.我々はプロジェクトマネジメントの仮想問題を作り,問題解決を目指すワークショップを実施した.その結果,参加者から多数のアイデアが出され,TRIZの非技術分野への適用が有効であることを確認した.