支部からのご挨拶

プロジェクトマネジメント学会関西支部からのご挨拶

 

 2017年4月にプロジェクトマネジメント学会関西支部長に就任いたしました同志社大学大学院ビジネス研究科の北寿郎です。社会人向けの経営系専門職大学院で教員を務めております。元々、工学系の出身で、大学に職を得る前はNTTでハードディスクやロボットの研究や業部門でテレビ電話のビジネス化の仕事をしておりました。プロジェクトマネジメントに関連する仕事としては、今話題になっているマイナンバーシステムの前身である住基ネット構築プロジェクトの業者側責任者を任された経験を有しております。現在は、工学系のバックグラウンドを生かしつつ、企業を含めた社会全体が持続的に成長するためのイノベーションマネジメントシステムやそれを支える組織能力の研究を行っております。

 皆さんは「両手遣い:Ambidextrous」という言葉をお聴きになったことはほとんどないと思いますが、アカデミックな経営学の世界では、この「両手遣い」という概念が最近重要な研究テーマとなってきております。「両手遣い」という概念を一言で言えば、相反する二つのやり方を器用に使いこなす能力です。既存ビジネスの深耕と新規ビジネスの開拓という全くやり方が異なる目標を高いレベルで両立する能力がこれに当たります。蛇足ですが、今の日本企業のほとんどは、この両手使いの意味を認識せず、既存ビジネスで培った方法論で新規ビジネスの探索に取り組むという愚を冒しています。

 プロジェクトマネジメントでもこの「両手遣い」が必要になると思っております。我々が慣れ親しんでいるPMBOK等をベースにしたプロジェクトマネジメントの世界では、プロジェクトマネジメントの3角形とも呼ばれる「品質、時間、コスト」といった目標を明確に設定することから始まり、WBSを作成し、計画を作り、その後はEVM等の手法を用いてプロジェクト推進を管理するというやり方が一般的です。これは明確な目標を設定し、それを過不足なく達成するという「目的達成の論理」をベースとしたマネジメント手法ともいえます。これに対し、最近のプロジェクトでは、急激に変化するユーザやビジネス環境を見ながらプロジェクトの目標さえも変更することもいとわない、いわゆる「状況適応の論理」に基づくマネジメント手法が必要になってきています。この「目的達成の論理」と「状況適応の論理」に基づくマネジメントの手法はソフトウェア開発で言うところのウォーターフォールとアジャイルの関係にも通ずるものといえます。この二つの方法論を上手く使いこなす、あるいは組み合わせる能力が「両手遣い」です。微力ですが、プロジェクトマネジメントの分野でこの「両手遣い」についての議論を活発にさせていきたいというのがプロジェクトマネジメント学会関西支部長としての抱負です。

 

 また、学会にはいくつもの役割・機能があります。産と学の橋渡しをすることも重要な役割・機能の一つだと考えております。関西支部の設立趣旨にも「関西地域の特性を加味しつつ、産学一体となった活動を行い,プロジェクトマネジメント技術の高度化と人材育成によって地域発展へ貢献していきます」とあります。池田一成氏、松本健一氏の歴代支部長のもと,役員、運営委員の皆様の尽力により,産学連携シンポジウムの開催,研究会の発足など,産と学が集う場が整えられてきました。私もそれを引き継ぎ、そうした場所を中心として連携の輪を拡げ、産学連携の具体的な成果を関西だけに留まらず、日本全体や世界に向けて情報発信する方策について考察し、チャレンジしていきたいと考えております。何卒ご支援よろしくお願いします。

 

 


プロジェクトマネジメント学会 関西支部 支部長
 同志社大学大学院ビジネス研究科 教授
 北 寿郎